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樹海(エッセイ)
富士山の北麓、山梨県側には、富士五湖がある。西側から、本栖湖、精進湖、西湖、河口湖、山中湖となる。
その本栖湖、精進湖、西湖を結ぶ線と、富士の一合目あたりにある長尾山を結ぶラインあたりを、「青木ヶ原樹海」と呼ぶ。なだらかな、散歩するには、そう疲れないいい森である。ほとんどが、モミ、ツガ、マツなどの針葉樹で、山道などがある周辺には、落葉樹なども多く、混交林と言ってもいいかも知れない。
富士山の中腹から樹海を見ると、冬でも緑が圧倒するので樹海という言い方は似合う。風が強いと、枝がなびくので、波のようにも見える。
青木ヶ原というのは、地名であり、樹海というのは、あとから誰かがそう呼んだ象徴的名称である。
樹海は、864年から2年間くらいをかけて、その周辺から、いくつかの火口が開いた。そのため、地盤は溶岩でできている。地盤が溶岩だから、樹木の根が、溶岩の表面を、ヘビのように這い、溶岩の隙間の土を求めている。その光景が、神秘的といえば、神秘的と言える。不気味と言えば不気味とも言える。チンパンジーは、ヘビを恐がる遺伝子を持つというが、チンパンジーに近い人間も、ヘビの苦手な人も多いので、不気味に思えるのかも知れない。
大量の溶岩が流れたので、洞窟が多い。専門的には、溶岩トンネルと言う。
開いた火口がいくつもあるので、火山研究には、貴重な場所である。
昔は、樹海の木は、人間に利用されて伐採されて、また植林などされた地域もある。樹海のアチコチに炭焼きの窯が点在している。洞窟などは、養蚕のための棚に利用された痕跡が残っている。この周辺は、林業の村であったことをうかがわせる。村人の生活の森であったのだろうと思う。
溶岩は、玄武岩である。おそらく、時速・3、4キロの速さで流れ、西湖、精進湖、本栖湖まで達したのだと思える。
森だから、動物、植物などは豊富である。火山や、動植物などを研究する学者が、よく訪れる。夜、樹海を歩くと、動物の動きが賑やかで、色々な音がする。樹木が密集しているので、風が強いと、木々の擦れる音が、赤ん坊の泣き声のような、お経のような、色々な音に聞こえる。
磁石が狂うというが、溶岩の上に直接磁石を置けば、多少そういうこともあるが、普通に手に持っている分には、そんなことはない。森なので、どこもかしこも光景が似ているので、私は、必ず、磁石を持ち、それを頼りに歩いている。
富士山には、川が無いので、サルはいない。富士山に降った雨は、その表面のスコリアから吸い込まれ、伏流水として、湖に流れ込んでいる。湖まで達するのに、20年以上の年数がかかっている。樹海にも川はなく、水分は、たちこめた霧を、溶岩の上に生える苔が蓄えていてくれて、どちらかというと、樹海全体が、湿地帯と言っていいくらいの風情である。
樹海付近は、標高1000メートルくらいあるので、森の母と呼ばれるブナの木や、森の父と呼ばれるミズナラも多い。人間にとっては、とても住みやすい、自然豊かな地域と言っていい。
最近では、