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それも何だかつまらなくなってしまった。
彼女は今度は盗むのではなく、食料品売り場の商品に、毒物を入れたらどうだろう、と思うようになった。犯罪としては、きわめて大きいものであることはもちろんわかっていた。人を死に至らしめるようなことは、やはりできない。せいぜい下痢をおこす程度の毒物を品物に混入することにした。あらかじめ、同じ品物を買っておき薬物を注射針で混入し、売り場にそれを置いた。それはいとも簡単に成功しただが二度三度やると、噂が大きくなった。これ以上やると危険だと思い、しばらくの間おとなしくしていた。
だからといって夫が自分のもとへ戻ってくるわけではなかったので、欲求不満はまた大きくなった。しかし今度は、悪いことなどしないで、長続きする趣味を見出すことに心がけることにした。何日か後に、これはというものに巡り逢った。
それは陶芸教室だった。思ったよりずうっと面白かった。やれば、やるほど奥行きが深く創作の面白さに満足していた。時には地方の窯元まで行って、自分の気がすむまでそれに没頭することもあった。もともと金銭的には裕福であったので、自分の家に作業所も作った。しばらくはそんな日が続いた。自分で満足のいくものは、そう多くはできなかったが、持て余す時間を潰すには、もってこいの趣味と言えた。だが、それでも、何か、物足りないものがあった。
それは、スリルであった。他人の眼を盗んで何かをする時の、身体中に感じる、あの、ゾクゾクとした、奇妙な快感が物足りなかった。
彼女はまた、いつの間にか、デパートに通うようになった。だが、以前のような、万引きや下痢を起こさせる程度の悪戯ではつまらないように思えた。と言って何をしていいのかは思いつかなかった。何か、とんでもない大きなことをやりたいと思っていた。
そう思いながら何日かそこに通っているうちに、デパートの戸締りの仕方や、従業員や業者の動きまでわかるようになってきた。
そんなある日、彼女は、これは、という素晴らしい悪戯を思いついた。ただ、商品を盗むのではなく、自分の作った陶芸作品を、そっと、このデパートのものと交換してしまおう、と思いついたのだ。さいわい、家には土も粘土もある。これで自分の作品を作りデパートの物と取りかえてしまうことにした。
やはりデパートに置くには置かれてあるものと似ていなければならない。時間がかかった。まさに、夜も寝ないで、必死に頑張った。
出来た。
頑張ったかいあって、彼女がいままで作った作品の中では、最高のものが出来た。
もし夫がこれを見ることができたら、きっとほめてくれるにちがいない。もしかしたら、自分を見直してくれるかもしれないと思えるほどの傑作であった。
さっそく彼女は勝手知ったるデパートに業者を装って、堂々とそれを運んだ。見る程にうっとりするほどの出来映えであった。
彼女はそれを置いて家に戻った。それを人が見た時の反応が楽しみでならなかった。
時間を待つのが苦痛な程であったが、デパートの閉店時間に売り場にとんでいった。そこは、やはり、大変な人だかりであった。思ったとおりであった。人が近づこうとすると、なぜか警察の人が制していた。
彼女は、もっと、見せてあげればいいのに、と思った。
「この中には、最愛の夫が入っているのだから、いいのはあたりまえよ」
彼女は、