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気配
ニューヨークについたのは、夕方だった。十名の仲間とガイドとあわせて十一名のツアーである。ホテルに荷物を置いて、すぐに食事に出かけた。マンハッタンの五番街のレストランに入った。さっそくビールということになった。
「全員ビア」
だれとなく言った。
ウエーターがすぐにビールを運んできた。
「あれ、ビールが十二あるよ」
とだれかが言った。たしかに一つ多かったが、別にじゃまになるものでなし、気にもとめなかった。
はじめてのニューヨークで、みんなはしゃいでいた。同じ大学の親しかった者が、それぞれ就職して五年がたっていた。卒業するときに、卒業して五年くらいたったら、同窓会を外国でやろう、ということになり、今回のニューヨーク・ツアーとなった。
翌日は、自由の女神を見にいくことになっていた。朝早くから、ホテルのロビーに集合して、小さなバスに乗り込んだ。
「皆さん、おそろいですか」
ガイドが言った。
「だいたいそろってます」
と誰かが言って、笑いが出た。ガイドだけは、
「だいたいじゃ、困るんです。ちょうど十人いてくれなくては」
と言いながら、人数を数えはじめた。
一度数えて、あれっ、というような顔をして、また人数を数えた。そして、また、あれっ、というような顔をした。
「へんですね、私を除いて、十一人います。だれか、顔の知らない人が乗っていないかどうか、まわりを確認してください」
ガイドが言った。みんな、そんなバカなという顔をして、まわりを確認しだしたが、知らない顔などはいなかった。だれもが、人数のことなど気にもとめていなかった。
「そうですか、まあいいや。多い分には問題ないだろう」
と、ガイドも気楽になって、そのまま、出発することとなった。
自由の女神は、マンハッタンの最南端サウス・バッテリー・パークからリバティ島という小さな島まで、フェリーで渡らなければならない。ガイドが六ドルの往復乗船券を買ってみんなに手わたしていた。そして、最後になった時、
「あれっ、おれの分は……、おれ、まだもらってないよ」
と仲間の一人が言った。
「えっ、そうですか。じゃあ混んでいて、違う人に渡してしまったのかもしれない」
と言って、ガイドは、もう一人分を買いに行った。
アメリカと言えばニューヨーク。ニューヨークと言えば、まずは、自由の女神ということになる。大の大人が、子供のようにはしゃぎながら、自由の女神の前にそろって、写真を何枚も写した。そして、集合時間になり乗船場までいって、ガイドが人数を数えると、また、一名多いのだ。