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 飲み過ぎて昼過ぎに目がさめると、となりに見も知らぬ女が寝ていた。しかも全裸である。とても美しいブロンドの女だった。
 私自身も身に何もつけていない。おそらく眠りながらでも、肌が触れ合ったにちがいない。そう思うと体があつくなる。
 ここはパリのホテルの一室である。仕事でパリの取引先の会社に出張して、やっと交渉が成立し、昨晩はお祝いと称して、したたかに飲んだ。どこでこの女と知り合ったのだろう。
 そういえば、昨晩何とかというショーを見た。その時のダンサーが客席までおりてきて一緒にワインを飲んだ。下半身に小さなキレハシしか付けない身なりで、私の膝の上でグラスをあげて乾杯した。気分は最高だった。何時ごろだっただろう。
 時計の針が、真っすぐ上で重なるところまでは記憶があるが、それ以降は何も覚えていない。外国だけに変なことになると面倒だ。今日の夜には、帰国の途になるのに、面倒はいやだ。

 かつて、日本のあるホテルでも、こういうことがあった。ホテルの最上階のバーで飲んだ。そこのホステスと意気投合してカラオケを歌いまくったまでは覚えていたのだが、朝、その女性が全裸でとなりに寝ていることのなったイキサツまでは、何としても思い出せなかった。
「なぜ、キミはここにいるんだ」
「あなたと契約したのよ、一晩で。酔っていたので苦労したわよ。三本いただきます」
 予想通りの答えだ。ともかくも三万円支払って帰ってもらった。少し体を動かしてみたが、とても肉体が満足しているとは思えなかった。

 日本での場合は言葉も通じたので簡単に済んだが、パリで、となると心配であった。フランス語を知らない。カタコトの英語で聞いた。
「キミは誰? お金は?」
「ダンサー。日本円で七万円」
 やはり、あの時の女にちがいない。
 私はとにかく体にタオルをまいて、ソファに腰掛けて話した。女は身に何もまとわずに、私の向かいのソファに腰掛けた。なぜか、その姿が映画をみているように美しく思える。財布を見ると、現金は五万円しかない。これは大変だと思い、私は急いでソファに投げ出されていた背広を着てフロントの両替所にとんで行った。だが、そこは午前中で終わりだと言う。どうにもならない。取引会社に女に払う金を貸して欲しいとも言えない。しかたなく部屋に戻った。
 まだ、女は裸だった。
「一晩の契約をしたのか?迷惑をかけたのか?」
「いいえ、私の方から頼んで泊めてもらったの。まだ、貴方は何もしていない。これからね。私は昨晩、ある人につきまとわれて逃げ出したかったの。それを心配して貴方が私をかくまってくれたの」
 それを聞いて、やや安心した。
「じゃ、
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七万円は?」
「逃亡するための飛行機代。貴方がだしてくれるといったの」
「わかった。何もしなくていい。ここに五万円あるから、これを持って帰って欲しい。とにかく持ち合わせはこれしかないんだ」
 私はやや強い口調で、しかし、懇願するような気持ちで言った。
 上から下まで金色に輝いているスタイル抜群のパリジェンヌ。
 カーテンの隙間からこぼれてくる光が、その女をキラキラと輝かせていた。こんな美人の全裸を見たのは初めての経験であった。しかし、ここで変な気を起こして面倒なことになったら大変である。ここ一番じっと我慢の子であった。洋服を手渡し、お金を出した。彼女はさびしげな顔をして帰っていった。それでこの小さな事件は忘れ去られるはずであった。だが夕方、日本に帰ろうとしてホテルの階下に降りると、前の道路にひとだかりがしている。人が殺されたのだという。好奇心もあって後ろから覗いてみた。すると何と殺されたのは今朝の女性だった。私は肝をつぶしたが、とにかく関わりになりたくなかったので、急いで空港に向かった。
 誰にも電話もしなかった。
 その後、私への取り調べはない。取引先の人の聞くところによると、その女は麻薬の運び屋だったらしい。あんな美人が、と思うと誰かにだまされたにちがいないと不憫な思いがしてならなかった。
 それにしても、つくづく外国はこわいところだと思った。なのに、懲りずにまた、日本で飲みすぎて、同じようなことをやってしまったのだ。
 朝、目覚めると、となりに女が寝ている。どうみても美人ではない。どうしてこんな女に声をかけたのか、と思うほどだった。私はまだハッキリしない二日酔いの頭で聞いた。
「私はあなたとどんな契約をしたのか?」
「一生、私にみつぐといったわ」
 そう言うなり、また眠り始めたのだ。ぼんやりと口をあけたまま。よく見ると、充分に知った顔である。知らないとは言わせないというような、自信に満ちたイビキをかいている。そういえば、私が、プロポーズをした時も、前後不覚になるほど、飲んだときだった。
 ここは自分の家だった。