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変に短くなってしまった髪を見て、美容院に連れて行ったくらいだった。まさか美代子が自分で髪を切ってしまったなどとは想像もついていない様子だった。
生まれて十三年後、美代子は中学校に上がった。
小学校の頃の彼女を知る者はいなくなった。
なぜなら、美代子は引っ越しをしたからだ。東から西へと。
美代子は大人しい、を通り越して少し内気になってしまっていたが、私はあの事件以来特に何もせずに大人しくしていた。
美代子はまた髪の私が何かするのではないかとビクビクしていたらしいけれど、私がずっと悪さを働かなかったせいで少しだけ安心したのか、少し開放的になった。
高校受験を意識しだす頃には、すっかり美代子は元気になり、明るい子として扱われていた。 成績も相変わらず優秀で、高校も有名な進学校を視野に入れていた。
まだまだ未成熟なところのある美代子の自慢は、少しづつ女らしくなってきた自分の細い体と、さらりとつやめく私だった。
同い年の男の子たちの羨望のまなざしを受けながら、美代子は誇らしげに廊下を闊歩した。私も美代子に誇ってもらえることが嬉しくて、風が吹くたびにきれいになびいてみせた。
受験勉強が本格化して、美代子は美しさに磨きをかけながら勉強するという荒業を見事やってのけた。
そうして、美代子は最初に描いていた進学校よりもレベルがもう少し上の、第一志望になっていた高校に合格することになる。
生まれて十六年後、美代子は高校に上がった。
狭い中学に比べれば、少しだけ広くなった世界。それでも高校には中学までとは比べ物にならないほどの広さがあった。
それと同時に、授業もよりハイレベルなものとなり、美代子は塾に通いだした。
友達も出来たけれど、美代子は遊ぶよりももっぱら勉強し続けていた。
まるで受験時代の影響が色濃く残っていて、美代子は勉強中毒になってしまったかのように勉強した。
私を振り乱して、ろくに手入れもせずに勉強し続けた。
そして当然、誇っていた私の色艶が徐々に失われ始めた。
それでも、私はできるだけ多く美代子の体から養分をもらい続けていた。
もし、美代子が勉強をすることから解放されたとき、自分があれだけ自慢にしていた美しさが損なわれてしまっていたらあんまりだと思ったのだった。
ところが、美代子は私に目を向けることもなく、気がついたら大学受験を意識しだす頃になっていた。
美代子は何かに取り憑かれてしまったかのようだったが、原因は考えるまでもなかった。
両親からの過剰な期待、高校での授業のレベルの上昇、先生の「いい大学に入れない奴は生きる価値などない」などの暴言、友達だった子たちの出来ないフリをする裏切り、女子の容姿を値踏みする男子たちからの心ない悪口…。
美代子は次第に追い詰められた。最初に感じた開放感もいまや彼女にとっては束縛と同じだった。